【公営住宅のアスベスト問題】潜在的な被害者は20万人超!史上最大の公害「公営住宅のアスベスト問題」とは

【公営住宅のアスベスト問題】潜在的な被害者は20万人超!史上最大の公害「公営住宅のアスベスト問題」とは

アスベストがもたらす健康被害については、すでに2000年頃を中心に大きな話題になったので「今さら」という感想を持つ方も多いでしょう。

ところが、つい最近になって驚くべき事実が報道され、再びアスベスト被害に注目が集まるようになりました。

「古い公営住宅にはアスベストが使用されていたため、20万人以上に健康被害が発生するおそれ」

これまでに公営住宅で生活したことがある方、現にいまも公営住宅に住んでいる方にとっては「冗談じゃないぞ!」と怒り心頭になっても当然でしょう。

過去に公営住宅で生活していた経験がある方は、アスベストによる健康被害が発症するのでしょうか?

いま現在も公営住宅に住んでいる方も危険なのでしょうか?

公営住宅におけるアスベスト問題について、詳しく解説していきましょう。

「公営住宅のアスベスト問題」とは?

まずは「公営住宅のアスベスト問題」という話題に初めて触れる方のために、この問題の概要についてカンタンに説明しておきましょう。

公営住宅のアスベスト問題の要点は次の3点です。

  • 問題点① 約50年もの間、公営住宅の天井材としてアスベストが使用されていた
  • 問題点② 調査の結果、23万人以上の住人に健康被害が発生するおそれがあることが判明
  • 問題点③ 被害者の保護対策は全く進んでいない

住宅事情や経済的な理由から公営住宅での生活を送ってきた方にとっては「国や自治体が提供してくれていた「安全・安心」の住宅だったはず」という失望感を拭えないことでしょう。

しかし、それ以上に「自分は大丈夫なのだろうか?」という不安を感じてやまないはずです。

きっかけはNHKの報道番組だった

公営住宅のアスベスト問題が世間に知れ渡ったのは2017年6月のことでした。

アスベストが人体に甚大な健康被害を及ぼすということは、1990年代を中心に大きな話題となって広く知れ渡っていた事実です。

また、2005年には総死者数が300人を超えるアスベスト事件の「クボタショック」が国民生活に震撼を与えていました。

今、この時代に「アスベストが危ない!」と叫んでも、多くの方が「何を今さら、そんなことはとうに知っているよ」という程度の話題性しかなかったのです。

ところが、2017年6月、NHKの報道番組「クローズアップ現代」において「“新たな”アスベスト被害〜調査報告・公営住宅2万戸超〜」という特集が放送されたことで、アスベスト問題はまたも世間の注目を集めることになったのです。

この番組の反響はすさまじく、各自治体には問い合わせが殺到しました。

対応に苦慮した自治体は、独自の調査をおこなったり、これまでに公営住宅に居住したことがある人全員に案内を送付したり、ホームページなどで公報するなどといった対策を講じましたが、今もなお、問題は収束していません。

公営住宅では、室内にもアスベストが使用されていた!

アスベストによる健康被害を考える際には、被害者が「どのようにしてアスベストと接してきたのか?」が問題となります。

そして、被害者の多くが、アスベスト製品の製造現場に携わっていたか、または飛散性が高く危険な「吹き付けアスベスト」を施工していた作業員です。

つまり、クボタショックのように、近隣にアスベストを大量に飛散させるような要因でもない限り、日常生活の中で甚大な健康被害が生じるほどのアスベストばく露は考え難いとされてきました。

ところが、アスベストが使用されていた公営住宅では、天井の下で日常生活を送るだけでもアスベストが原因の疾患が発生するおそれがあるというのです。

一体、公営住宅ではどのような方法でアスベストが使用されていたのでしょうか?

居室の天井に危険な「レベル1」の吹き付けアスベストが使用されていた!

現在、アスベストには飛散性や危険度に応じて3段階の「レベル」が規定されています。

飛散性・危険度が高い順にレベル1・レベル2・レベル3と分類されており、中でも最も危険な「レベル1」に該当する「吹き付けアスベスト」では、解体・除去をおこなう際に特別な措置が必要になります。

通常、レベル1に該当する吹き付けアスベストは、一般住宅には使用されていません。

吹き付けアスベストが施工されてきたのは、ビルや体育館、立体駐車場などの大型建造物ばかりです。

立体駐車場の天井をみると、白色とも灰色ともいえないような、まるで鍾乳石のような見た目のフワフワとした建材が使用されていることに気がつくでしょう。

これが吹き付けアスベストです。

公営住宅では、なんと居室の天井材として、レベル1の吹き付けアスベストが施工されていました。

吹き付けアスベストは、アスベストとセメントを混合してスプレー状に吹き付けて施工します。

時間が経つと硬化しますが、カチカチに固まるのではなく、フワッとした硬い綿状に変化します。

手で押せば低反発まくらのようにグッと押し込むことができるし、指でつまめばわたあめのようにちぎることだってできるのです。

アスベストの危険性を知っている私たちであればそんな行為は絶対にしませんが、そんなことは誰も予想だにしていなかった時代ですから、公営住宅の居室内は莫大な量のアスベストの繊維が飛散していました。

アスベスト除去のプロ

当時、アスベストの危険性を知らない子どもたちは、フワフワとした手触りのアスベストをまるでおもちゃの代わりのようにして遊んでいました。

彼らがアスベストの危険性を知ったのは、随分と大人になってからなのです。

1956〜2006(昭和31〜平成18)年の間はアスベストばく露のおそれ有り

吹き付けアスベストが建築物に施工されるようになったのは、今から60年以上も前の1956(昭和31)年ころです。

断熱性・保温性・防音性が高く、しかも安価という夢のような建材として重宝されたアスベストは、日本全国で広くさまざまな建築物に施工されてきました。

1975(昭和50)年にはアスベストが健康被害を引き起こすおそれがあることが指摘され、アスベスト含有率が5%を超える施工が禁止されます。

さらに1986(昭和61)年には「石綿の使用における安全に関する条約」が締結されたことで、世界的にアスベストの使用が縮小されることになりました。

この条約の締結によって、吹き付けアスベストは「使用しない方向で指導」という方針に転換されましたが、強い強制力はなかったため、含有率5%未満での吹き付けアスベストの施工が続きます。

1995(平成7)年には労働安全衛生法の改正がおこなわれ、含有率1%以上の吹き付けアスベストが禁止されますが、まだ「全面撤廃」という状況ではありませんでした。

2006(平成18)年には、ついに含有率の規制が0.1%以上となり、吹き付けによるアスベストの施工は姿を消します。

ただし、含有率0.1%未満であればアスベストが使用された建材を使用することができたため、飛散性が低いものであったとしてもアスベスト建材が利用されていたおそれは払拭できません。

こういった流れを考えると、1956〜2006(昭和31〜平成18)年の間に建築された公営住宅では、含有率の多少の差はありながらも、吹き付けアスベストやアスベスト含有の建材が使用されていたと推測されます。

アスベスト除去のプロ

1975(昭和50)年までに建築された公営住宅では、遠慮なく吹き付けアスベストが使用されていたおそれがあります。

また、ここで挙げた年代はあくまでも「築年」であり、居住期間がもっと後でも危険域に該当するおそれは十分に考えられます。

対象戸数2万2,000戸・被害者は23万人超、未曾有の公害事件に発展するおそれ

クローズアップ現代では、NHKとともに患者の支援団体や「NPO 中皮腫・じん肺・アスベストセンター」が協力して日本全国の公営住宅について調査を実施しました。

その結果、1956〜2006(昭和31〜平成18)年の間に建築された公営住宅のうち、わずかにであってもアスベスト含有の建材が使用されている件数は2万2,000戸にも及ぶことが判りました。

さらに、公害リスクの専門家による分析によると、むき出しになった吹き付けアスベストの天井の下で生活することによって大量のアスベスト繊維をばく露してしまった人の数は、なんと23万8,000人になるという結果が導き出されたのです。

わが国の近現代史には「4大公害」という歴史があります。

  • 熊本県の「水俣病」
  • 富山県の「イタイイタイ病」
  • 三重県の「四日市ぜんそく」
  • 新潟県の「第二水俣病(新潟水俣病)」

小学校で学習するこれら4大公害でさえ、最大規模の水俣病の被害者が2,200人、ついで多いのが四日市ぜんそくの1,700人です。

もし公営住宅に住んでいた経験がある多くの人がアスベストによるじん肺・悪性中皮腫・肺がんなどを発症すれば、4大公害の被害者数とは比べものにならないほどの大規模な被害になるでしょう。

「アスベストのせいだ」と気付くのは数十年後?静かな爆弾の脅威

アスベストによる健康被害の恐ろしい点として挙げられるのが「潜伏期間の長さ」です。

アスベストが体内に蓄積されて、なんらかの病気を発症するまでの潜伏期間は30〜50年だと言われています。

あまりピンとこない方が多いかも知れないので、クローズアップ現代の中で実際に紹介された被害者の実話を紹介しましょう。

幼少の頃に公営住宅に住み、50歳を超えて中皮腫を発症

横浜市に住む女性のSさんは、特に大きな病気もなく健康に過ごしてきましたが、50歳を超えた頃、原因不明の激しい咳に悩まされるようになりました。

病院で検査を受けたところ、全く予想もしていなかった病名を告げられます。

Sさんの病気は「中皮腫」。

肺を覆っている胸膜に悪性の腫瘍ができてしまう病気で、アスベストのばく露による症例が数多く報告されている病気でした。

とはいえ、Sさんは自分の記憶をさかのぼってみてもアスベストを長期・大量にばく露したような経験はありませんでした。

そこで、あのクボタショックの健康被害を立証して救済制度を実現したNPO法人「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」に調査を依頼したところ、幼少時から20年の間居住していた公営住宅の天井が原因であることが判明したのです。

ただ、普通に生活をしていただけなのに、まさか室内で危険なアスベストにばく露するなどとは、誰が予想したことか…

Sさんのように、公営住宅での生活から数十年以上が経ってから健康被害が発生するのがアスベストの特徴です。

「今のところなんともない健康体だ」なんて安心してはいられないということがご理解頂けたでしょう。

アスベスト除去のプロ

アスベストが原因となる病気は、どれも潜伏期間が長いものばかりです。

10年以内に発症した例はほとんどないため、健康被害が発生するか否かは数十年以上は経たないと分かりません。

公営住宅のアスベスト問題、誰が責任を取るのか?

なんらかの病気を発症するおそれがある人数が23万8,000人にも及ぶ公営住宅のアスベスト問題。

ちなみに、23万8,000人という人数がどれくらいの規模なのかというと、2018年4月1日時点での神奈川県茅ヶ崎市の人口とほぼ同数になります。

これだけ大規模な健康被害が発生するとなると、医療費の負担や治療の助成、健康被害に対する慰謝料などの問題に発展することは間違いありません。

そして、誰にその責任を追及するのかというと、公営住宅ですから国・都道府県・市区町村になるでしょう。

国の省庁は「対象外」とする姿勢?

NHKが独自におこなった調査では、公営住宅のアスベスト問題について関係省庁が次のとおりコメントを発表しています。

  • 厚生労働省…住宅内なので対象外である
  • 環境省 …住宅内なので対象外である
  • 国土交通省…対策は講じているが、被害に関する専門的な知識がない

このように、どの省庁からも積極的な回答は得られていません。

つまるところ、国の関係省庁も、いったい誰がどのように責任を取る問題なのかがはっきりしていないのです。

住民の力で検査費用の助成を実現したケース

埼玉県川越市では、公営住宅のアスベスト問題について今回のように注目を浴びる前から対策が講じられてきました。

なんと、今から30年も前に、体内にアスベストが存在しないか検査する費用の全額を行政が負担する制度が確立されていたのです。

しかも、この制度は公営住宅に住んでいた住民が行政に対応を求めた結果だというのですから、住民の行動力にも、行政の対応の柔軟さにも感心させられますね。

アスベスト除去のプロ

行政を動かすためには、住民が一致団結するだけでなく、NPO法人などのパワーを借りるのも有効です。

もし過去に公営住宅に住んでいた経験があり、行政に対応を求めるのであれば、相談会などに出かけてみることから始めてみましょう。

現在も公営住宅に住んでいるがアスベストの危険はあるの?

公営住宅のアスベスト問題を学ぶと心配になるのが「今も公営住宅に住んでいるけど、健康被害の心配はないのか?」という点でしょう。

2017年のNHKの放送によって各地の自治体に問い合わせが殺到したため、平成初期におこなったアスベスト対策の内容をアナウンスする自治体が増えています。

各自治体の説明を確認する限り、現存する公営住宅のうち、吹き付けアスベストの天井がむき出しのままになっている物件は存在しないようです。

特殊な塗料などを全面に塗布したり別の天井材で蓋をするなどして、吹き付けアスベストを封じ込めるか、または吹き付けアスベストを除去して別の天井材を新設する工事が完了しています。

ただし、老朽化などによってもアスベストの飛散が少ない「レベル3」に該当する建材、たとえばリシンやスタッコと呼ばれる外壁材や、アスベストとセメントを混合して製造されていたスレート屋根などは、いまだに現存しているようです。

今後、大規模な改修工事などがあれば除去される可能性はありますが、もし、アスベストの飛散が心配になるほどに損傷している箇所などがあれば、速やかに自治体に報告するべきでしょう。

アスベスト除去のプロ

レベル3に該当するアスベスト建材は、破砕・切断などしない限りはアスベストの繊維が飛散する心配はありません。

むしろ、非常に耐久性が高い建材なので、アスベスト非含有の建材よりも長持ちしている可能性があります。

アスベスト建材の存在が気になる方は、自治体の公営住宅課などに問い合わせてみましょう。

公営住宅のアスベスト被害が気になる方は?

  • アスベストが規制される以前に公営住宅に住んでいた
  • アスベストが規制されてから公営住宅に住んでいたが、古い住宅だったので対策が遅れていた気がする

そんな方は「建物アスベスト被害WEBサイト」にアクセスしてみましょう。

(https://sites.google.com/site/tatemonosekimen/)

こちらのサイトでは「中皮腫・アスベスト疾患・患者の家族の会」がNHKとの共同調査の結果や、自治体が発表しているアスベスト使用の実態調査の結果、アスベスト問題に関する地方新聞の記事などを掲載しています。

ホットラインを設置して無料相談もおこなっているので「どこに相談すれば良いのかが分からない」という方は、まずはこちらに相談してみましょう。

【公営住宅のアスベスト問題】潜在的な被害者は20万人超!史上最大の公害「公営住宅のアスベスト問題」とはのまとめ

ここでは、2017年から注目を集めるようになった「公営住宅のアスベスト問題」について、問題の実態や対処法などを解説しました。

もし、過去に公営住宅で生活していた経験があるという方は、潜在的にアスベスト疾患を発症するリスクを抱えているおそれがあります。

定期的な健康診断を受診しながら、万が一の場合に備えてアスベスト疾患と居住していた公営住宅の関係を裏付けるために事実を把握しておきましょう。

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2018.10.12

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