限界集落とは!?限界集落が増加する原因や3つの問題点と過疎化の対策や取り組み

限界集落とは!?限界集落が増加する原因や3つの問題点と過疎化の対策や取り組み

みなさんは「限界集落」という用語を耳にしたことはありますか?

日本における少子高齢化が急速に進み始めた平成の初頭ころ、高知大学教授の社会学者の大野晃氏が提唱した用語です。

限界集落が提唱された時代、日本経済は誰もが「永遠にこのお祭り騒ぎが終わると思っていなかった」と言われるバブル景気が終焉を迎えた、まさにその頃でした。

日本中がマネーに踊り狂っていた時代だったので、衰退していく地域があることは軽視されていたのです。

バブル景気が終焉を迎え、国民が日本経済の失速を体感し始めた頃、地方の集落では人口減少という問題に気が付くきます。

第一次産業を主とする集落、つまり農村では、働き盛りの若者の流出が止まらず「将来は集落自体が消滅してしまうのではないか?」という懸念が生じました。

「平成の大合併」と呼ばれる市町村合併が盛んに行われ、行政区域の表面的な人口は増加しましたが、

実際に住んでいる人の動きが変わるわけではないので、衰退が進んでいく集落を救う手立てとはなっていません。

ここでは「空き家問題」にもリンクする「限界集落」の問題について紹介していきましょう。

限界集落とは

人が集まって居住している状態を「集落」と呼びます。では、単に家々が建ち並んでいれば全て集落と呼ぶのかというと、それは間違い。

集落とは、単なる居住地を指すのではなく「トラブルに対して住民同士で協力して解決していく共同体(コミュニティ)」としての機能を持っています。

近所関係が密接であれば集落を形成することが多く、例えば同族(地図上で見れば同じ姓の家が多いなど)が集まったことを起源とする集落も存在しています。

集落という用語の定義だけをみれば、広義では巨大な人口を抱える都市や町(街)を含みます。

しかし、一般的に集落という用語を耳にしてイメージするのは、小規模な農山漁村、中山間部に散在する集落でしょう。

限界集落の対象となるのは、後者のような狭義での集落を指すと考えて間違いありません。

限界集落とは、これら農山漁村・中山間部に散財する小規模な集落が、

  • 少子高齢化による過疎化
  • 労働力や生活の維持管理能力の喪失

によって、共同体としての機能を失う限界に達している状態、または近い将来にその状態が訪れることが予測されることを意味しています。

限界集落と並んで、少子高齢化やコミュニティとしての機能喪失を指す用語として存在するのが「過疎化」ですが、限界集落の提唱者である大野氏は「過疎化と呼ぶには実態とのズレが生じている」として、あえて批判を受けるであろう「限界集落」という用語を提唱しました。

つまり限界集落とは「過疎化を超えた惨状」を呼ぶ用語だとも解釈できます。

限界集落の分類と過程

限界集落の基準は「65歳以上の住民が人口の50%以上を占める状態」と定義づけられています。

65歳以上の住民は、生産力の中核となる生産年齢人口に含まれなくなり、集落の労働力を残り半数以下の青年・壮年層に頼らざるを得ない状態となります。

人口の半数以下の労働力が、労働力を失った半数以上の人口を支え続けることは、よほど特殊な産業によって潤沢な資金力を得ることができる集落でない限り不可能なのです。

とはいえ、実際の農林水産業の現場に目を向けてみると、65歳以上でも「体が動く限りは働き続ける」と生涯現役を貫いている人も多く、この定義が必ずしも実状と一致しているとは言えないでしょう。

しかし、労働人口の高齢化が進めば、10年・20年と長期的な視点で評価した場合、将来的に持続された労働力を見込むことはできません。

限界集落の「65歳以上が50%以上」という定義は、1つの線引きとして大いに意味を持っていると言えます。

また、近年では頻発している壊滅的な大災害や、ダム建設による水没など、外的な要因で短期間に集落が消滅するケースを除けば、健全に機能している集落が突如として限界集落に転じることはありません。

限界集落の誕生には、必ず段階的な過程が存在します。

したがって、限界集落の前後には「準限界集落⇒限界集落⇒危機的集落」という段階的な評価が存在します。

準限界集落は時間の経過と共に限界集落を経由し、さらに危機的集落へと転じます。

各評価の定義は以下のとおりです。

  • 準限界集落:55歳以上が人口の50%以上
  • 限界集落:65歳以上が人口の50%以上
  • 危機的集落:65歳以上が人口の70%以上

危機的集落を超えると、さらに

  • 超限界集落:約5軒以下
  • 廃村集落:1軒2名以下

となり、最終的には「消滅集落:人口0」となって集落の存在自体が消滅してしまうのです。

限界集落はどれくらいあるのか!?限界集落の実情

限界集落の定義を説明しましたが、限界集落との関わりがない方であれば「そんな状態の集落がどこにあるのだろう?」と現実感を持てないかもしれません。

そこで、わが国には実際にどのくらいの限界集落があるのかを考えていきましょう。

総務省は、何年かに一度、全国的な大規模調査を実施し、その結果を公表しています。

最も新しい調査は平成22年4月時点の調査で、過疎地域等(法律で規定される過疎地域に該当する市町村または一部の区域)に該当する集落を対象に実施されました。

当時の調査対象となったのは、全国で801市町村、1,522区域、64,954集落です。

全国の限界集落は10,091

限界集落の定義である「65歳以上が人口の50%を超える集落」は、全国で10,091集落でした。64,954の調査対象集落のうち、限界集落と評価された集落の比率は15.5%でした。

平成18年に実施された前回調査では、調査対象集落のうち限界集落は7,878集落・全体比12.7%であり、急激な増加ではないにしろ、確実な増加を見せています。

限界集落の数が多かったのは中国圏・九州圏・四国圏の順ですが、割合では四国圏・中部圏の順で軒数が多くなっています。

四国圏と中部圏は特に限界集落の比率が高く、集落の機能低下・集落の維持困難が強く問題視される結果となりました。

65歳以上だけの限界集落は575

限界集落の定義は「65歳以上が半数以上」ですが、65歳以上の割合が100%を占める集落も存在しています。人口比100%の限界集落の数は、全国で575集落です。

さらに人口の100%が後期高齢者である75歳以上で占められている集落は205集落もあります。

65歳以上100%の限界集落は、中国圏や四国圏に数多く存在し、割合では北陸圏と四国圏に多く存在しています。

日本人の平均寿命は男性80歳・女性87歳ですから、75歳以上の集落がこの先10年後に存続することは不可能であり、今後、行政がどのような施策で対応していくのかに注目が集まっています。

条件が厳しいほど限界集落が多い

統計結果に目を向けると、限界集落になっている集落には共通した特性があります。

限界集落に共通する特性とは「居住条件が厳しくなるほど、限界集落の比率が高まる」という傾向です。限界集落は「過疎化を超えた状態」なので、条件を見ると当然のように感じるでしょう。

【限界集落になりやすい条件】
• 50人未満(30世帯未満)である
• 山間地である
• 人口が減少傾向にある
• 地形的末端である
• 役場から10km以上離れている

地形的末端とは、その集落の先にほかの集落がない地域、つまり「行き止まり」の集落を指します。

市町村役場や出張所などは、一般的に利便性が高い市街地の中心部にあります。市街地から離れた山間地、その中でも地形的末端に存在する集落は、青年・壮年世代の人口が市街地に流出し減少することで高齢化し、限界集落に陥ってしまうのです。

限界集落の3つの問題点

限界集落を取り巻く環境には、容易には解決できない数多くの問題点が存在しています。

いかに人口が減少し集落としての機能を喪失していたとしても、その集落にしか見られない独特な伝統文化や風習が残っている地域があります。

伝統文化や風習を保全するべきという声があることは喜ばしいことですが、限界集落と化した集落の再生は容易なことではありません。

一方でコンパクトシティ化を進めることで限界集落を廃すべきという声も挙がっています。

コンパクトシティ化とは、市街地のスケールを小さくして徒歩圏内を生活圏とする都市づくりの発想で、近代型の都市計画として注目されていますが、郊外の過疎化を促進させてしまうという副作用も持ち合わせています。

すでに限界集落と評価されている集落は、集落としての存続にこだわらず住民を都市部に移住させて消滅集落化させようというのです。

着実に増加の一途をたどっている限界集落ですが、限界集落が増えるとどのような問題が起こるのでしょうか?

当の限界集落だけに限った問題ではなく、社会全体に対する影響も踏まえながら、限界集落の問題点を探っていきましょう。。

限界集落の問題点①空き家・空き地の増加

まずは当サイトの課題である「土地活用」と「空き家問題」を主軸に考えていきましょう。

空き家・空き地が生まれる一つの要因として、かつて人が住んでいた家や用途があった土地が、限界集落を経て消滅することが挙げられます。

日本の国土は山林が多く、人が住める土地は全国土のうちわずか27%程度。限りある土地に多額の費用をかけて建てられた家が、誰にも使われることなく荒廃してしまう事態は、資源の有効活用に逆行していると言えるでしょう。

空き家・空き地の問題は地方全体で起こっている問題であり、限界集落に限った問題ではありません。

空き家問題は、特に周辺住宅に対する管理面・防犯面に大きな問題を抱えていますが、限界集落だからといって「周りに人がいないのだから、空き家があっても問題ない」とも言い切れません。

空き家問題は人の目が届かないからこそ起こる懸念も持っています。「周りに人が住んでいないのだから、空き家があっても誰の迷惑にもならない」と考えるのは間違いです。

管理されていない空き家は、不法に住み着く輩の存在を許してしまったり、犯罪者のアジトとなるなど、犯罪行為を助長してしまうのです。

昨今、空き家問題が各メディアで大々的に取り上げられていますが、わが国の人口は減少を続けているのに、世帯数は増加傾向にあります。

空き家問題がさらに深刻になるのはこれからです。空き家問題の今後と対策について考えていきましょう。

限界集落の問題点②農林漁業への影響

限界集落の多くは、農林漁業を主産業としています。集落の消滅によって、それらの産業は確実に衰退の一途をたどることになります。

特に農業では、限界集落が消滅すると大きな影響を受けるとされており、米・野菜などの農作物が不足する事態が懸念されています。

耕地面積の約4割が中山間部に存在し、限界集落の多くも同じく中山間部に存在するので「限界集落の増加=農作物生産力の減少」という結果につながります。

限界集落の増加は耕作放棄地の増加に繋がり、カロリーベースで38%、生産額ベースで68%しかないわが国の食料自給率をさらに下げることになるでしょう。

現在、国の施策として、農業を大規模化して効率的な生産を目指す動きがあります。

もしこの施策が成功すれば、わざわざ非効率な中山間部で農業を行う必要がなくなり、食料自給率の水準を向上できると期待されています。

また、林業においても、担い手不足による山林の荒廃が深刻となっています。「林業が衰退しても、山林が自然の姿に戻るだけでは?」と考えているなら、それは大きな誤解。山林を健全な状態に保つためには、人為的に間伐をおこなうことが必須です。

適度な間伐を怠って荒廃してしまった山林は、薄暗くうっそうとしており、日照不足のため樹木が細くなるだけでなく地表面の植物も不足します。

その結果、本来、山林が持っている保水機能は劣化し、表土が流出しやすなって地滑りや崖崩れなどが発生します。

国有林は国によって維持管理されているため健全な状態を保っていますが、私有林は所有者管理が原則。

限界集落となり山林が放置されてしまうと、山林が本来持っていた機能も徐々に失われてしまいます。

山林の状態悪化は、漁業にも影響を与えてしまいます。

山林から河川へ、河川から海へと流れ込むミネラル分は、海水の栄養分となります。

海水中の栄養分はプランクトンの成長を助け、プランクトンの成長は魚介類などの水産資源の生育を促します。海の豊かさと山の豊かさは、遠く離れているようで実は密接な関係しています。

水産業が盛んな湾などでは、河川の上流にあたる山林に植樹をして維持管理することで海を豊かにするくらいですから、限界集落に陥ることで山林が荒廃すれば、下流の海まで衰退してしまうのです。

限界集落の問題点③経済的な問題

限界集落の存在は、行政や公共サービスの運営に経済的な打撃を与えます。

例えば、集落から1km離れた場所に家が1軒あれば、その家に通じる道路を造り、その家に電気を通すためだけに電柱を立てて、その家に水を供給するためだけに水道管を敷設しなくてはなりません。

郵便物があれば、ハガキ1枚の配達のためだけに郵便局員が1kmを往復することになり、行政は住民サービスの適正化を図るため、現状把握や調査・対応に追われることになります。

たとえ利便性が著しく低い人里離れた山間部に住もうと、それはその人の自由です。しかし、地域全体の経済効率に目を向けると、集落から離れた場所に住む人の存在は経済効率を下げていると評価せざるを得ません。

規模を大きく広げて考察すると、市街地と限界集落が持つ関係性も構造上は同じです。

人口1人あたりにかかるコストは、人口が密集して経済効率を高めた市街地よりも、人口閑散である限界集落の方が割高なのです。

1,000兆円もの借金を抱えて債務超過に陥っている日本。経済学や社会学に精通している人でなくても、今後ますます労働力が低下することが予測される中で、経済学の効率化をおこなわないと国民全体の生活を支えることができないのは容易に理解できるでしょう。

人口が少ないのに維持のため多額のコストを要する限界集落は、非効率・不経済な存在であり、限界集落の維持に多額の税金が投入されることに批判的な意見が増えつつあるのです。

限界集落が増加する3つの原因

集落を維持するために必要な条件は非常に単純です。

「人口を流出させず、新しい世帯が生まれ続けること」に尽きます。

しかし、住みよい環境を提供している都市部でさえ人口流出は起こり得ることですから、集落の維持には、都市部と同等もしくはそれ以上の流入が求められます。

限界集落に陥る究極の原因は、人口流入が少ないにもかかわらず、人口流出が止まらないことです。

限界集落を改善させるためには、単純に考えれば「人口流入<人口流出」の状態を解消するのがベストです。

もう1つ、改善のための方法があるとすれば、住民を完全に移住させてしまい、限界集落自体を消滅させてしまうことでしょう。

原因も解消法も解明されていますが、どちらの手段も進まない。

このような現状が、限界集落の増加を黙認させているのです。

限界集落が増加する原因①限界集落から出て戻らない

限界集落に至る究極の原因は「人口流入<人口流出」ですが、この悪しき方程式を生んでしまう最大の要因は「持続的で十分な収入が確保できないこと」でしょう。

中山間部の主要産業は農業です。過酷な労働に対して農業が低収入であることは、国がこれまでに数多くの保護政策をとってきたことからも明らかでしょう。

雇用を生み出さなければ自治体は住民生活を維持できません。自治体は「雇用促進のため」というお題目を掲げて公共事業を推進し、地域住民の雇用と収入を維持してきましたが、公共事業の財源はもちろん税金。このような自転車操業では、いつか破綻が訪れることくらい予測ができていたはずです。

若年層人口が都市部に集中したことも要因の一つです。若者の多くは閉鎖的な集落での生活を好みません。明るく住みよい魅力的な都市部での生活に憧れた若年層は、成人する頃を境に次々と集落から離れていきます。

そして、ひとたびでも限界集落から離れた若年層は、限界集落に戻ることはありません。「いつか集落に戻って活性化させていこう」と考える若年層は皆無に近く、Uターン率の水準は非常に低くなっています。

もっとも、週休二日の休みが確保されており、汗水垂らして土に汚れることもなくデスクワークをして得られる収入が、毎日早朝から休みなく肉体労働を強いられる農業の収入よりも高いのですから、効率的な生活を目指す若者が農業から離れてしまうのは至極当然なのです。

地域別・作物別に見ればサラリーマンよりもはるかに高い収入を得ている農家も存在していますが、たとえ同等もしくは高い収入を得られても、若年層は利便性の高いな都市部の生活から離れようとはしないのです。

限界集落に陥る原因は、一部では「農業では生活に十分な収入を得られない状況を作った政策に問題がある」と言われています。

ただし、農業による収入が少ないために仕方なく仕事と収入を求めて都市部に流出する層と、収入額の高低以前に農業を嫌い、山間部の集落での生活を嫌って流出する層を同一視することはできないでしょう。

限界集落が増加する原因②限界集落に移住しない

限界集落に陥る原因が「人口流入<人口流出」だとすれば、人口の増加、とりわけ労働力となる若年層の人口流入が盛んであれば、限界集落は解消されると考えられます。

限界集落が集落としての機能を維持するためには、高齢者よりも若年層の人口がふえる必要がありますが、残念ながら限界集落に何らかの魅力を感じて移住する人はわずかです。

昨今では田舎体験がブームになっていますが、これはあくまでも余暇活動に過ぎません。都市部で生活しているからこそ、集落での非日常的な体験が受け入れられるのであり、集落での非日常を日常にしたいと感じて実行する人は稀です。

限界集落への移住が少ないことは、限界集落側にも問題がある場合があります。人と人との結びつきが強力で、周辺住民の協力なしでは祭事や冠婚葬祭などが成り立たない限界集落は数多く、限界集落側が移住者を受け入れる際に「地域活動に協力的な人が好ましい」と移住者の人柄を求める傾向があります。

移住者視点で考えたとき、この傾向は大きなマイナス要素となります。

現代の価値観は個人生活重視です。わざわざ利便性が高い都市部での生活を捨ててまで限界集落に移住したい動機は、概ね「大自然の中で悠々と生活したい」という環境重視の面が大きく「田舎の人付き合いに憧れている」と地域との協力を積極的に望んでの移住はごくわずかです。

移住者の視点でみれば「住んでくれるだけで誰でもOK」なら移住したいが「郷に入っては郷に従え」よろしく、限界集落のローカルルールに従った人付き合いを暗に強要されるようでは敬遠されてしまいます。

まとめてみると
 限界集落の人材ニーズは「集落のローカルルールに従って、地域活動や生活に積極的に協力し、集落の産業を支える次世代の担い手になって欲しい」
 移住者の求める生活ニーズは「人ごみから離れ大自然の中でリラックスした生活を送りたい」

となっており、ニーズが一致していないため、極めて限定的な要望を持つ人しか移住してくれません。

この疎通がままならない状態で移住に踏み切っても、都市部からの移住者は田舎暮らしの煩わしさに疲れてしまい、再び都市部へと戻ってしまうのです。

限界集落が増加する原因③限界集落から移住できない

限界集落の解消を進める方法として考えられる「完全移住による集落の消滅」。

限界集落の再生を目指すのではなく、移住を進めて限界集落の存在自体を解消しようとする手段においては、住民の理解と協力が非常に重要です。

ただし、これにも思うように進展できない大きな障壁が存在しています。

まず、長年住んできた土地への愛着から、最期を迎えてるまで住み続け、骨を埋める覚悟でいる人が多いことです。

限界集落の利便性の低さを説いても、都市部の生活の魅力を説明しても、愛着のある土地を捨てて移住することへの抵抗感は、当事者にしか理解できません。

どこに住むかは個人の自由なのですから、移住を強制することもできないでしょう。

もう1つの問題は資金不足です。人口の50%以上が65歳以上の高齢者である限界集落では、通院や介護を必要としている住民が多く、住民自身が「都市部に移住したい」と考えているケースも多々あります。

しかし、限界集落から都市部への移住にはある程度の潤沢な資金が必要です。市街地に移住するほどの蓄えがなく、土地建物を売却して資金を工面しようとしても不動産の評価が安いため資金が足りないのです。

限界集落を離れて自立した生活を送っている子ども世代の協力がない限り、限界集落の高齢者が自力で移住資金を用立てるのは不可能に近いでしょう。

この状況を鑑みれば「行政が補助金を投入すれば?」と考える方も多いでしょう。実際に、限界集落からの移住を希望している高齢者も、公的資金の投入を望んでいます。

しかし、公的資金の財源は地域住民または国民全体から集めた税金です。限界集落に住み続けていたという理由だけで補助金投入の対象となれば、不公平感が高まるでしょう。

限界集落を解消することによって、経済的な効率の悪さを改善することが期待できます。しかし、税金の使途には公益性が必要であり、一部住民の利便性のためだけに投入したのでは納得は得られません。もし公的資金の投入に踏み切る場合は、公益性と結びつけた合理的な理由が必要になるでしょう。

限界集落による過疎化の対策や取り組み

ひとたび限界集落に陥れば、その再生は並大抵の努力では成し遂げられません。限界集落に近づけば近づくほど再生が困難になってしまうのですから、その手前である準限界集落の段階において、過疎対策を施す必要があります。

過疎対策の主催は自治体やNPO法人が主です。住民の協力を得て実施する「住民参加型」にすることで、外部との活発な交流を図り、地域促進を進めようとして、各自治体が積極的な取組みをみせています。

限界集落による過疎化の対策①空き家バンク

過疎化が進むと空き家・空き地が増加します。管理されていない空き家・空き地の増加は地域の防犯面や景観面などに大きな問題が生じます。

そこで、所有者が空き家・空き地物件を登録することで、移住目的で物件を探している希望者とのマッチングを行うサービスを提供しています。

空き家バンクは全国に数百単位で存在しており、自治体が公的システムとして運営しているものも数多くみられます。

ただし、空き家バンクは設置するだけで自動的に成功するケースは少ないため、空き家バンクの運営を始めたが事実上は機能していないという自治体も少なくありません。

空き家バンクが有効に機能するためには、自治体の広報活動や地域住民の受け入れ体制が確立しており、移住促進に積極的な地域であることが条件となっているようです。

空き家問題は田舎に限った問題ではありませんが、都市部と比べると需要がより少ないのは明らかです。

この問題を改善するための取り組みが空き家バンクであり、空き家バンクの仕組みは利用者にとって大きなメリットを生み出しています。

限界集落による過疎化の対策②空き家を活用した再生事業

限界集落にある空き家、主に「古民家」と呼ばれて一つのブームとなっている古風な日本住宅を使い、田舎体験や農林漁業の体験用に宿泊施設として利用する事業です。

古民家での宿泊は、田舎体験の大きな魅力の一つとなっています。

空き家活用は、限界集落に限らず全国的な課題となっています。過疎地域で商業施設をオープンするのは難しく、豊かな経営を期待することはできませんが、山々に囲まれた豊かな自然、風土に根付いた独特な伝統文化を活用しながら、非日常の体験と宿泊をセットにすることで、商業施設として運営するよりも有効的な活用を実現しています。

ホテル・旅館などのように宿泊施設としての利用料で収益を上げる目的ではなく、過疎地域での生活や都市部との環境の違いを身をもって体験し、魅力をアピールすることで、移住を促進させることを目的としています。

運営元は主にNPO法人で、国や自治体からの補助金交付の対象となることが多いのも特徴の一つです。

限界集落による過疎化の対策③イベント事業

限界集落を抱えている自治体が予算を計上し、外部委託によるプランニングでイベントを企画する事業も盛んです。

もしイベントが成功し、SNSやインターネット上で話題を集めれば、次回以降の開催で大きく集客が見込めます。

単発のイベント事業では、祭り要素で集客には成功しても移住にまでは繋がりません。イベントを過疎地域で継続していくには運営元・受入側の双方の労力が大きくなるため、なかなか成功することはありません。

地域の知名度を上げることに成功すれば、一定の成果があったと評価するべきでしょう。

限界集落への移住促進を目的とするからには、地域住民が一丸となり、継続的なイベントに取り組むのがベストですが、住民が高齢化していると継続的なイベント開催は困難であるため企画重視になり、成功の如何はプランニング委託先の手腕によるものとなります。

限界集落による過疎化の対策④IT(ICT)を活用した企業誘致ならびに産業育成

従来の事業の形態では、どんな業種でも人と物が集まらなければ事業が成り立ちませんでした。

ビジネスの利便性、人と物が集まるアクセスの良さなど、事業効率の面を考慮すれば、事業の拠点は自然と都市部に集中していました。

しかし、最近ではインターネットを利用したビジネス分野が活発化し、個人・法人を問わず、通信環境さえ整備されていれば事業の場所は問わない時代になりました。

限界集落または準限界集落においても、自治体が通信インフラを整備し、自治体とともに労働力の提供など地域住民のバックアップ体制を整えることで、大手企業のサテライトオフィス誘致に成功した事例もあります。

インターネット事業だけでなく、農業分野にIT技術やシステムを採用して効率化を図ったり、ホームページでのアピールや販売など長い時間をかけて地道に産直品のブランド化に成功した地域も存在します。

これらのビジネスモデルは、実施すればどこでも成功するモデルというわけではありません。当然ながら限界集落化が激しいほど難しくなっていくものです。

しかし、大切なのは

  • 成功を信じて、新たな試みに対して最初の一歩を踏み出す決断力と勇気
  • 地域の賛同を得て、地域一丸となって取組む姿勢

です。これまでにチャレンジしたことがない試みで大きな苦痛を伴うとしても、我らが集落を愛して発展を望み、集落の消滅を待つよりは建設的だと言えるでしょう。

限界集落とは!?限界集落が増加する原因や問題点と過疎化の対策のまとめ

今や日本は人口減少時代の真っ只中。今後もさらに限界集落が増加していくことは容易に想像できます。

調査を重ねるごとに限界集落の数・割合は増加しており、いくつかの限界集落が消滅して絶対数を減らすとしても、これからしばらくの間は増加が続くものと予想されます。

刺激的な名称で世間の脚光を浴びた限界集落ですが、一方で、世間で騒がれているほど限界集落の問題は大きな問題ではなく、一部の社会学者によって誘導されたものだとする意見もあります。

実際に限界集落での生活で困っている住民があげた悲鳴よりも、限界集落に関わりのない人や学者が机上の問題として維持費を取り上げているのでしょう。

限界集落であってもそこに住み続けたい人たちが持つこだわりが、利便性や経済的な効率などを度外視して「愛着のある土地に住むこと」であれば、その感情は大いに尊重されるべきです。

限界集落問題に対する見解は、自分の生まれ故郷が限界集落である、限界集落での生活経験がある、限界集落に居住している親族がいる、限界集落に全く関わったことがないなどの立ち位置の違いで大きく異なるでしょう。

限界集落が持つ独特な文化や豊かな環境を保全していくことに価値を感じるか否かも、個人の思想次第です。

ただし、合理性や利便性を追求することが当然となった時代に生きているとはいえ、私たち日本人は、その違いを擦り合わせながら、これまでに平和な暮らしを築いてきた民族です。

自分が限界集落に住む立場で「この土地を愛しているので移住はしたくないし、再生を目指したい」と考えているのに、そのこだわりを利便性や経済的な効率と天秤にかけて簡単に捨てられるようなら、それはこだわりとは呼べません。

もしも日本が利便性や経済的な効率だけで土地への愛着を簡単に捨て去ってしまうような社会になってしまえば、どんなに利便性が高く経済効率の高い都市部に移住したとしても限界集落よりも住みにくい環境だと感じることでしょう。

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