認知症の親名義の土地やマンションは売却できる!?成年後見制度の概要と売却の流れ

日本では、全人口に対して約2.3%の人たちが認知症を発症しているという統計結果があります。

「意外と少ない」と感じる方がいるかもしれませんが、実は先進国の中ではワースト1位!

日本は世界の中でも認知症患者が多い国なのです。

そこで問題となってくるのが、認知症の親の財産をどのように継承・処分するのかということでしょう。

実は、認知症を発症した親の土地や家やマンションを売却するには、たとえ実の子どもであってもカンタンに代理人として売却することはできません。

成年後見制度に則って手続きを進める必要があるのです。

ここでは、認知症の親の土地や家やマンションを代理で売却する方法や注意すべきポイントについて徹底解説します。

子どもでも代理で売却するのは難しい?成年後見制度とは?

家売るレオさん

親が認知症になってしまうと、土地や家やマンションが不要になってしまうことがありますよね。

イエプロ

介護のために同居したり老人ホームに入所させたりすると、土地や家やマンションが不要になることも珍しくありませんよ。

家売るレオさん

そうなると、親が手続きできないので子どもが代理で売却するしかないですね。

イエプロ

ところが、そうカンタンにはいかないんですよ…

認知症を発症してしまうと判断能力が低下してしまいます。

不動産売却には高度な判断能力が必要になるので、認知症を発症してしまった親自身が手続きを進めるのはほぼ不可能でしょう。

すると、残された方法は「子どもが代理で売却する」となるわけですが、これが一筋縄ではいきません。

なぜなら、認知症を発症した親の土地やマンションを売却するには「成年後見制度」を利用しなければならないからです。

認知症の人がおこなった不動産売却は無効になることがある

不動産の売却には、当事者の「意思能力」と「行為能力」が必要です。

自分名義の土地やマンションをいつ、どんなかたちで売却しようが、それは当然に自由ですよね。

しかし、それはあなたに「意思を決めて判断する能力」と「手続きの意味を理解して遂行する能力」が十分に備わっているからです。

契約とは、当事者の自由な意思で契約の内容に合意しておこなわれない限り無効になります。

これを「私的自治の原則」といいます。

また、契約において自由な意思があったとしても、契約取引をおこなう能力が完全ではない者がおこなった契約は無効となります。

たとえば、3歳の子どもに「キミが手に持っているおもちゃを売って」と持ち掛けて「いいよ」と返事をもらったとしても、わずか3歳の子どもに売買取引の能力があったなんて思えませんよね。

自由意志は「自分自身で決定している」ととらえることで成立してしまう側面があるので、さらに行為能力によって画一的に基準化して契約の成否を決めるわけです。

この例のように、意思能力が未成熟であったり衰退してまったりしている人の状態を「意思能力が完全ではない」と定義して、その人の行為は「行為能力が制限されている」という状態になります。

よく契約トラブルなどで登場する「未成年者の契約は無効」という理屈は、この行為能力が制限されているという状態に基づいているわけですね。

そして、認知症を発症してしまった親も「行為能力が制限されている」とみなされるため、たとえ本人が「不動産を売る」と認めて売却を進めたとしても、売買契約が無効になってしまうのです。

この問題は、認知症がどの程度のレベルに達しているのかによって左右されます。

このくらい進行している場合は判断能力なし、この程度なら判断能力ありというわかりやすい基準があるわけではありません。

ただし、裁判例をみると「高度の認知症がある」と重度認定を受けていなくても、中程度の認定があると法律行為が否定される傾向があるようです。

売却には「成年後見制度」を利用する必要がある

認知症を発症した親の土地やマンションの売却を成立させようとしても、あとあとになってトラブルになり「法律行為は無効だ」と判断されて不利な扱いを受けるおそれがあります。

安全に売却を成立させるためには、認知症を発症した親本人ではなく、代理人である子どもの手によって売却するべきでしょう。

ところが、たとえ実の親子関係があったとしても、代理人として売却の手続きを進めることはできません。

手続き上は実印と印鑑証明書があって、署名さえできれば書類は揃うでしょう。

しかし、仲介の不動産会社との媒介契約、買い主との売買契約、所有権移転登記などでは司法書士への委任契約など、売り主サイドとしては本人の意思確認がおこなわれる機会が多くあります。

そのため、土地やマンション売却は「所有者本人でないと不可」であり、やすやすと代理人などという存在が認められることはありません。

そこで登場するのが「成年後見制度」です。

成年後見制度という名称を初めて聞いたという方のために説明しておきましょう。

成年後見制度とは、精神上の障害によって判断能力が不十分な人が法律行為によって不利益を被ってしまわないために、裁判所が代理人を認定して支援する制度です。

判断能力が不十分で支援が必要になった人のことを「成年被後見人」と呼び、その人を支援する人のことを「成年後見人」と呼びます。

ある人の成年後見人であること、だれかが自分の成年被後見人になっていることの事実は、法務局における「成年後見登記」によって証明されます。

もし、あなたの親が認知症を発症していて、親の代わりに土地や家やマンションを売却しようと考えているなら、まずは親を成年被後見人に、あなた自身を成年後見人として認めてもらう手続きを進めなくてはなりません。

成年後見制度の手続きの流れ

成年後見制度を利用するには、裁判所の手続きが必要になります。

まずは家庭裁判所に手続き開始の「申立て」をおこないます。

認知症の親名義の土地や家やマンションは売却できる!?成年後見制度の概要と売却の流れ

申立てをおこなう家庭裁判所は、成年被後見人となる人の住所地を管轄する家庭裁判所です。

たとえば、あなたは都内に住んでいて、認知症を発症してしまった親は大阪に住んでいるとすれば、申立ては大阪家庭裁判所に申請することになります。

・申立書(家庭裁判所で無料配布)
・親の戸籍謄本、戸籍の附票など
・診断書(成年後見用のもの)

これらの申請書類を揃えて、家庭裁判所を訪ねましょう。

申立てには申立手数料800円と登記嘱託手数料2600円分の収入印紙のほか、通知のための郵便切手などが必要になります。

次に、成年被後見人になろうとしている親、成年後見人になろうとしている子どもが家庭裁判所に呼び出されて調査官による事実の調査がおこなわれます。

実際に調査官と会って面談し、調査官は申立てが妥当であるかを判断します。

調査官の事実調査だけでは判断しがたい場合は精神鑑定がおこなわれます。

1件の鑑定につき5~10万円程度の鑑定料がかかりますが、精神鑑定が必要なケースは全体の10%程度だといわれているため、ほとんどの場合は精神鑑定なしで手続きが進みます。

成年後見制度の適用が妥当がと判断されれば、家庭裁判所の「審判」によって裁判所の命令として成年後見人が選任されます。

ほとんどの場合は申立て時に挙げた候補者が選任されますが、家庭裁判所が「この人では不適切だ」と判断した場合では弁護士や司法書士が選任されることもあります。

家庭裁判所から下された審判の内容は、審判所の謄本という形で本人らに通知されます。

こうして成年被後見人に対する成年後見人が決まると、法務局に成年後見登記がなされて、法定後見が開始されます。

手続きに要する期間は意外と短く、申立てから審判までおおむね2か月以内で完了します。

スムーズだった場合は1か月前後で手続きが完了することもありますが、反対に家庭裁判所としても判断がつきにくいケースではもっと時間がかかることもあります。

後見・保佐・補助の違い

実は、認知症を発症したことで判断能力が低下してしまった人を法的にサポートする制度は、成年後見制度だけではありません。

法定の後見制度には、3つの類型があります。

ひとつは成年後見制度、残りの2つは「保佐」と「補助」です。

まずは分かりやすく比較した一覧表をご覧ください。

補助 保佐 後見
対象になる人 判断能力が不十分 判断能力が著しく不十分 判断能力がまったくない
選任された人が同意

または取り消すことが

できる行為

借金や相続、訴訟、新築や増改築などの一部で、申立てにより裁判所が定める行為 借金や相続、訴訟、新築や増改築などのほか、申立てにより裁判所が定める行為 原則としてすべての法律行為
選任された人が代理

することができる行為

申立てにより裁判所が

定める行為

申立てにより裁判所が

定める行為

原則としてすべての法律行為

まずここまででも紹介してきた「後見」は、法定の後見制度を利用している全体の80%を占めています。

判断能力のほとんどを失ってしまっている、または備わっていないため、法律行為のすべてを後見人に任せることになります。

次に程度が重たいのが「保佐」です。

保佐は、判断能力がかなりの程度で低下してしまった人が対象になります。

どの程度かというと、日常生活におけることがらは自分でできるが、借金や相続などのように法律行為が絡む難しい手続きには不安が強い程度です。

保佐を受ける人を被保佐人、保佐する人を保佐人と呼び、やはり家庭裁判所による選任が必要です。

補助は、3類型の中ではもっとも軽く、難しい問題については誰かのサポートが必要な程度の人が対象です。

補助を受ける人を被補助人、補助する人を補助人と呼び、他の類型と同じく家庭裁判所によって選任されます。

後見・保佐・補助のもっとも大きな違いは、認められる権利の範囲です。

まず、後見には「代理権」と「取消権」が付与されます。

代理権とは本人に代わって法律行為をおこなう権利、取消権とは対象者が単独でおこなった法律行為を無効にする権利です。

たとえば、代理権に基づいて借金をすることができるし、取消権に基づいて本人が申し込んだ借金を無効にすることもできます。

保佐には代理権がありませんが、その代わりに「同意権」が付与されます。

同意権とは、対象者が単独でおこなった法律行為を有効にする権利です。

ここでも借金にたとえると、対象者が借金を申し込んだとしてもそれだけでは有効にできず、保佐人が同意することによって契約が完成することになります。

補助には代理権や同意権が与えられていません。

ただし、補助人によるサポートが必要となったときは、家庭裁判所に申し立てることで限定的に補助人に代理権や同意権が付与されます。

後見・保佐・補助は、それぞれ対象者の判断能力の程度によって与えられる権利の範囲の強弱に差があるという違いがあるのです。

成年後見人が代理で土地や家やマンションを売却する場合の流れ

家売るレオさん

家庭裁判所が「あなたは成年後見人です」と認めてくれれば、晴れて親の土地や家やマンションを売却できるってことですね。

イエプロ

それが、そうカンタンでもないんですよ。成年後見人が代理で土地や家やマンションを売却するためには、家庭裁判所の許可が必要なのです。

認知症を発症した親に代わって子どもが土地や家やマンションを売却する場合、子どもは家庭裁判所から成年後見人として選任される必要があります。

では、手続きを踏んで成年後見人に選任されたとすると、それ以後は子どもが自由に土地や家やマンションを売却できるのでしょうか?

答えは「NO」です。

正規の手続きによって成年後見人になった子どもは、成年後見人としての役割をまっとうする義務があるため、勝手に土地や家やマンションを売却することはできません。

成年後見人の使命は「本人の財産の管理」

成年後見制度は、判断能力がない人に代わって手続きを進めるために存在するわけではありません。

成年後見制度は、成年被後見人の意思を尊重し、本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら必要な代理行為をおこなう制度です。

「必要な代理行為」をおこなうわけですから、本人にとって不必要な行為までもが認められているわけではありません。

成年後見人は、単に成年被後見人の手足となって代理行為をするというカンタンな役割ではなく、本人の財産や収入を把握して生活に配慮し、適切に財産を管理する使命を負っています。

成年後見人に選任されると、1か月以内に財産の調査を完了させて財産目録を作成し、家庭裁判所に提出する義務があります。

さらに、本人の財産については収入・支出を金銭出納帳にしっかりと記録して、領収証などの資料もすべて保管しておかなくてはなりません。

「面倒だし、さぼっていてもバレないだろう」なんて考えてはいけません。

家庭裁判所は、成年被後見人の利益がしっかりと守られていることを確認するため、定期的に「後見監督」を実施して、財産の管理状況などをチェックします。

定期的な確認だけでなく、家庭裁判所が必要と判断すれば抜き打ちでおこなわれることもあるため、成年後見人としては気を抜くことができません。

もし、成年後見人が本人の財産を流用したり、不必要に消費したりすると、家庭裁判所から成年後見人を解任されたうえに民事・刑事の両方の責任を問われる事態にもなるのですから、成年後見人の責任は重たいのです。

親名義の土地や家やマンションを代理で売却するには家庭裁判所の許可が必要

認知症を発症して家庭裁判所から成年後見人を指定された人の土地や家やマンションは、成年後見人の自由意志によって売却することができません。

成年被後見人の土地や家やマンションは、間違っても成年後見人の土地や家やマンションではありません。

成年後見人は「適切な管理を任されているだけ」で持ち主ではないのですから、自由な意思で売却することなんてできるはずがないのです。

成年被後見人が所有する土地や家やマンションを売却するには、家庭裁判所の許可が必要です。

正確には、家庭裁判所に対して「居住用不動産処分の許可」の申立てをおこなう必要があります。

居住用不動産処分の許可によって土地やマンションを売却するには、次の書類が必要になります。

・申立書(裁判所のホームページでダウンロードできます)
・不動産の全部事項証明書
・不動産の評価証明書
・不動産会社が作成した査定書
・不動産売買契約書の草案
・収入印紙800円分
・郵便切手82円分(審判書の謄本の郵送を希望する場合のみ)

これらの必要書類などを揃えて家庭裁判所に申立てをおこない、売却を許可する審判結果が下されれば土地や家やマンションを売却することができます。

売却の流れは重要!先に売却先を決めておく必要がある

いま、居住用不動産処分の許可の申立てに必要な書類などについて紹介しましたが、ここでピンときた方もいるはずです。

必要書類の中に、不動産売買契約書の草案がありますよね。

不動産売買契約書の草案があるということは、買い主との話はまとまっていて、あとは家庭裁判所の許可をもらうだけ…という状態でないと申立てもできないということになります。

とりあえず売却の許可だけはもらっておいて、あとは買い主をゆっくり探そうという手順では、家庭裁判所から売却の許可をもらうことができません。

つまり、認知症を発症した親の土地や家やマンションを売却する際には、次のような流れになります。

STEP① 家庭裁判所から成年後見人としての選任を受ける
STEP② 不動産会社に査定を申し込んで査定額を決めてもらう
STEP③ 不動産会社と媒介契約を結び、買い主を探してもらう
STEP④ 買い主との間の交渉で、売却価格を決める
STEP⑤ 不動産会社に仮段階の売買契約書を作成してもらう
STEP⑥ 必要書類を揃えて家庭裁判所に売却許可の申立てをおこなう
STEP⑦ 売却許可の審判を経て、正式に売買契約を結ぶ
STEP⑧ 買い主に売却する

この手順で土地やマンション売却が完了しますが、成年後見人の立場としては土地や家やマンションを売却したとしても仕事は終わりません。

成年後見人はあくまでも被後見人の利益のために土地や家やマンションを売却するのですから、売却によって得た利益を適切に管理し、被後見人の生活のために使わなくてはならないのです。

認知症を発症した親の土地や家やマンションを売却しても、その売却益を自分のために使っていたり、勝手にほかの親族と分配したりといった不適切な行為があると、家庭裁判所による後見監督で指摘されて責任を問われることに…

親が居住用として利用していなかったマンション売却はどうなる?

家売るレオさん

もし、認知症になってしまった親が複数の土地やマンションをもっていたりすれば、すべて家庭裁判所の許可を受ける必要があるんですか?

イエプロ

いいえ、家庭裁判所の許可が必要なのは居住用として利用している家やマンションだけですよ。

認知症を発症した親の家やマンションを売却する際には、家庭裁判所に「居住用不動産処分の許可」の申立てをして許可を受ける必要があります。

ここで「居住用」というくらいですから、当然に「非居住用」の不動産の存在も問題となってくるわけですが、非居住用の家やマンションを売却する場合はどんな手続きが必要になるのでしょうか?

非居住用マンションの売却は家庭裁判所の許可は不要

なぜ被後見人の家やマンションを売却するのに家庭裁判所の許可が必要なのでしょうか?

それは、大切な財産を適切に管理・処分するためという名目がありますが、第一に「住まいを確保するため」という目的があります。

たとえば、悪いことを考える成年後見人がいて、被後見人の家やマンションを売却してお金を得たうえで、被後見人は安いアパートにでも引っ越しをさせる…なんてことがあると大変ですよね。

住まいは何よりも大切な財産ですから、家庭裁判所が慎重に判断するのも当然です。

では、被後見人が「住まい」として利用していない家やマンションだとどうなるのでしょう?

被後見人としては、所有する不動産が減った代わりに金銭が増えて、しかも住まいは確保されているのだから、特に問題はなさそうですよね。

実際のところ、被後見人が自らの住まいとして使用していなかった家やマンションは「非居住用」とみなされるため、家庭裁判所の許可がなくても、成年後見人に付与された代理権に基づいて売却できます。

被後見人が投資用として所有していた家やマンション、放置して空き家となっている住宅などは、すべて非居住用として家庭裁判所の許可なく成年後見人の権限で売却可能です。

ただし、成年後見人の選任の際に「成年後見監督人」が選任されている場合は注意が必要です。

成年後見監督人とは、成年後見人の事務を監督する立場の者で、成年後見人が被後見人の利益に反する行為をおこなおうとした場合には、被後見人の代わりに監督人がこれを阻止します。

成年後見監督人が選任されている場合は、非居住用の家やマンションを売却する場合でも監督人の許可を受ける必要があります。

成年後見監督人は、裁判所から指定された弁護士などが選任されるため、成年後見人が自分勝手に家やマンションを売却しようとしても専門家の立場にたって反対されるでしょう。

非居住用のマンション売却は「必要性」と「相当性」がポイント

非居住用のマンション売却について成年後見監督人が許可するか否かをわけるポイントは「必要性」と「相当性」です。

まず必要性とは、被後見人にとってマンション売却が必要であることを指します。

たとえば、被後見人の生活費を維持する目的や、医療費・老人ホームの利用費を捻出するためなどの目的があれば、それは「被後見人のため」であって必要な処分であるといえます。

一方で、被後見人の親族、たとえば成年後見人に選任されていないほかの兄弟姉妹などの生活を支援する資金とするなどの目的では、被後見人のために必要な処分ではないため認められません。

相当性とは、家やマンションを売却することで被後見人が不利益を被っていないことを指します。

たとえば、時価相場では5000万円の価値がある家やマンションを、買い主が親族だからといって破格の1000万円で売却したとすれば、被後見人としては差額4000万円分の不利益を被っているため、相当性を欠くことになります。

成年後見監督人の許可を受けるには、この「必要性」と「相当性」の両方を満たしている必要があるのです。

親が老人ホームに入所する場合は要注意!特別控除が受けられなくなることがある

家売るレオさん

認知症を発症した親が老人ホームに入所して帰宅の見込みがない場合は、やはり土地やマンションは売却するべきですよね?

イエプロ

老人ホームの費用などを考えると、土地やマンションを売却して費用にあてるべきかもしれませんね。そう考えると、土地やマンションの売却は急いだほうが利口ですよ。

認知症を発症した人の中には、家族などの介護を受けても日常生活を送ることが難しくなってしまった人もいます。

認知症が相当な程度にまで進行してしまうと、老人ホームなどの介護施設に入所するケースが多いでしょう。

家庭裁判所の許可を受けないと売却できないのは、家やマンションであれば「居住用」に限られています。

この「居住用」という考え方は幅が広く、生活の本拠地として現に居住している家やマンションの場合はもちろん、老人ホームなどに入所していても、退所することになれば帰って生活をする土地やマンションもこれに含まれます。

現在まさに住まいとして居住している家やマンションだけでなく、老人ホームから退所したり病院から退院したりすれば住まいとして居住する見込みがあれば、法定の後見制度では「居住用」とみなされるわけです。

ところが、いくら後見制度上では居住用とみなされても、税法上は「非居住用」とみなされることがあります。

もし、老人ホームに入所した年から3年後の12月31日が過ぎてから売却してしまうと「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除」が受けられなくなってしまうのです。

3000万円の特別控除の節税効果は強力!

居住用財産の3000万円の特別控除とは、マイホームを売却した際に物件の所有期間にかかわらず譲渡所得から3000万円が控除される制度です。

家やマンションを売却すると、利益が発生することがあります。

たとえば、8年前に購入した時は3000万円だった家やマンションが、最近になって地価が高騰して6000万円で売却できたとしましょう。

売却の際に、不動産会社への仲介手数料の支払いなどで200万円かかったとします。

すると、売却価格6000万円-売却費用200万円-取得費用2000万円=3800万円となり、3800万円の利益が発生したことになります。

わが国の税制では「利益が発生したら税金がかかる」のが基本なので、この3800万円の利益に対して当然に税金が課せられます。

家やマンションなどの不動産物件を売却して手にした利益は「譲渡所得」が課税されますが、物件の所有期間が5年以下なら短期譲渡所得として39.63%、5年超なら長期譲渡所得として20.315%が課税されます。

この場合は物件の所有期間が8年なので長期譲渡所得となり、3800万円×20.315%=771万9700円が課税されます。

売却額は6000万円ですから、6000万円-譲渡所得税771万9700円=5228万300円が手元に残る計算になりますね。

ところが、ここで居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除が利用できた場合は、次のようになります。

(売却益3800万円-特別控除3000万円)×20.315%=162万5200円

売却額6000万円-譲渡所得税162万5200円=5837万4800円

特別控除を利用した場合に手元に残るお金と、特別控除なしの場合の手元に残るお金を比べると、609万4500円もの差が生じます。

「被後見人の利益のため」を考えるのであれば、マンション売却後にこれだけの差が生じてしまうことを考慮するとマンション売却は「3年以内に完了させる」のがベストです。

ここまでで紹介してきたとおり、認知症を発症した親のマンションを成年後見制度の利用によって代理で売却するには、手間も時間もかかります。

老人ホームへの入所は税法の上では「転居」とみなされてしまうため、3000万円の特別控除の有効期限は老人ホームへの入所とともにカウントダウンされていくわけです。

後見制度では居住用とみなされてしまうので売却許可を得る手続きは面倒に感じるかもしれませんが、これだけ大きな節税効果があることをふまえると、面倒でも早めに売却の手続きを始めるべきだといえますね。

認知症を発症した親のマンションを上手に売却するための3つのポイント

家売るレオさん

成年後見制度を利用すると、マンション売却も一筋縄ではいきませんね。

イエプロ

では、成年後見制度を利用して上手に親の家やマンションを売却するためのポイントを紹介しておきましょう。

成年後見人としての選任、居住用不動産の処分許可の申立てなど、認知症を発症した親の家やマンションを売却するのは一苦労どころか二苦労、三苦労してしまうほど大変です。

そこで、これから成年後見制度を利用して親の家やマンションを売却しようと考えているあなたのために、上手に売却するためにおさえておきたい3つのポイントを紹介しましょう。

ポイント① まずは不動産会社の査定を受けておく

あなたが成年後見人に選任されたら、売却の予定のあり・なしにかかわらず、まずは不動産会社に頼んで親のマンションの売却査定を受けておくことをおすすめします。

被後見人の生活全般を守る使命を負っている成年後見人にとって、家やマンションにどのくらいの価値があるのか、今後の生活資金の確保に役立つのかを把握しておくことは大切です。

また、いざ売却のために動き始めようとすると、家庭裁判所に提出する書類の中には不動産会社が作成した査定書も必要なので、いずれ査定は必須となります。

必要に迫られる前に不動産会社の査定を受けておけば、対応が後手に回ることもありません。

余裕を持った手続きのためにも、まずは不動産会社による売却査定を受けておきましょう。

ポイント② 売却価格はできるだけ高く!

家庭裁判所がマンション売却の許可を下すためには、先ほど説明した「相当性」も大切な判断材料になります。

成年後見人は被後見人に利益をもたらす手続きを遂行しなければならないので、できるだけ高い価格で売却できる見込みをつけておくことで許可が下されやすくなるのは当然です。

できるだけ高い価格で売却するには、不動産会社を1社に絞らないことが重要です。

売却査定の際には必ず複数の不動産会社に査定を依頼して、できるだけ高い価格で売却してくれる見込みがある不動産会社を選びましょう。

また、不動産取引の仲介には一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の3種類がありますが、高い価格での売却を目指すなら、同時に複数の不動産会社と媒介契約を結ぶことができる一般媒介契約がベストです。

成年後見制度を利用して家やマンションを売却する際には、購入希望者との交渉を煮詰めて「あとは家庭裁判所の許可をもらうだけ」という状態に持ち込んでおかなければなりません。

すると、広く購入希望者を募ることができる一般媒介契約を結んでおくほうが買い主を見つけやすく、しかも一番高い価格で売却を進めてくれる不動産会社を選ぶこともできるので、一石二鳥です。

できるだけ高い価格で売却できるように見込みをつけておくことで家庭裁判所の許可が得やすくなることを覚えておきましょう。

ポイント③ 不動産の一括査定サイトを活用する

マンション物件の早期・高値売却を目指すために、きっとあなたのお役に立つのが「不動産の一括査定サイト」です。

不動産の一括査定サイトは、インターネットでカンタンな物件情報を入力して申込みフォームを送信するだけで、複数の不動産会社から簡易査定の結果が送られてくるサービスです。

一括査定サイトに登録している不動産会社は、どれもマンション売却が得意な優良業者ばかり。

その中から高値で売却できる見込みが強い不動産会社を選んで実際の査定を受ければ、家庭裁判所も相当性は十分と判断してくれるでしょう。

一括査定サイトに登録している不動産会社なら、複数社に査定を依頼していることも折り込み済みですから、無理に専任媒介契約・専属専任媒介契約を押し付けられることもありません。

成年後見制度を利用したマンション売却は、通常の売却の手順よりも面倒で手間も時間もかかります。

売却許可の申立てには必須となる不動産会社の査定と買い主の取り付けは、一括査定サイトを利用することで劇的に省力化できますよ。

認知症を発症した親の家やマンションを成年後見制度の利用によって売却するなら、一括査定サイトを活用することで一段とスムーズになります。

ぜひ一括査定サイトを上手に活用して、被後見人である親の生活を豊かにしてあげましょう。

「認知症の親の家やマンションを売却するには?成年後見制度の概要と売却の流れ」のまとめ

家売るレオさん

少し手続きが面倒な感じがしますけど、家やマンションを早く・高く売るってことに関しては通常の不動産売却と同じですね。

イエプロ

成年後見制度を利用するからといっても、やるべきことは変わりません。早く・高く売却できることで家庭裁判所の許可を受けやすく、しかも特別控除も受けられるのですから、上手に売却したいですね。

成年後見制度という厳密で難しい側面がある制度を利用するため、認知症を発症した親のマンションを売却することに戸惑いを感じた方がいるかもしれません。

しかし、親の判断能力が低下してしまっている以上、たとえ実の子どもであっても勝手に代理人として家やマンションを売却することはできません。

制度をしっかりと理解して正しい手順で売却すれば、親の介護や医療にかかる費用の負担をグッと軽くすることができるでしょう。

また、ただでさえ煩雑な手続きとなるうえに、家庭裁判所の許可が下されるまでには時間がかかるため、トントン拍子での売却…というわけにはいきません。

特別控除の有効期間が近づいてから売却に向けたアクションを起こしても手遅れになっていることがあります。

認知症を発症した親が家やマンションなどの不動産を所有している場合は、できるだけ早めに成年後見制度の申立てをおこなっておきましょう。

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